YouTuber(ユーチューバー)と法律|弁護士壷屋広紀

query_builder 2021/04/21
法律コラム
インフルエンサー

はじめまして。

弁護士の壷屋と申します。中央区で弁護士事務所を開設しています。

※2023年9月より関法律事務所(新宿区)に移籍しました。


縁あって、YouTuber(ユーチューバー)の方の法律まわりをサポートさせて頂く機会があり、ご相談を頂くことが多いことから、
「YouTuber(ユーチューバー)と法律」と題して、YouTuberをめぐる法律関係を整理したいと思います。
踏み込んだ検討ではありませんが、ご参考にしていただければ幸いです。


【目次】
第1.YouTuberとは
 1.個人事業主が運営主体の場合
 2.企業が運営主体の場合
第2.YouTuberにとって重要な法律関係
 1.YouTube利用規約
 2.素材利用における権利関係
 3.事務所所属の場合、事務所との契約(マネジメント契約など)

第1.YouTuberとは

一般に、YouTube上で動画を投稿・公開し、その広告収益により生計を立てている人を指して「YouTuber(ユーチューバー)」と呼びます。

Wikipediaでも次のように説明されています。


YouTuber(ユーチューバー)とは、動画共有サイトYouTube上で自主制作の動画作品を継続的に公開しつつ、YouTube社が定める提携プログラムに従い、公開動画に付帯された広告収益による配当を得ている個人および組織。


出典:ウィキペディア(Wikipedia) 「YouTuber」https://ja.wikipedia.org/wiki/YouTuber


もっとも、一口にYouTuberといっても、あらゆる人が参入可能ですから、その活動形態や背景はさまざまです。ここでは、YouTubeチャンネルの運営主体(個人事業主/企業)という観点から、整理を試みます。

1.個人事業主が運営主体の場合


個人がアカウントを開設・運営する場合、その活動形態により、4つ程に分類することができると思います。


⑴.事務所・企業などに無所属(フリー)で活動している方

YouTube活動に関して、事務所や企業、団体に属することなく、独立して活動している場合です。

多くの方はこの形態で活動していると思われます。

個人事業主として活動することになるため、いわゆる「案件」など、外部取引先との間で契約主体となるのは、当該個人事業主となります。


⑵.兼業・副業として活動している方
会社員や企業経営者など、本業とは別にYouTubeチャンネルを開設して活動される方もいると思います。
基本的には、個々の活動の性質は上記⑴と同様に考えてよいと思いますが、特に会社員の方の場合、働いている企業の就業規則やSNS利用規程などに抵触しないように注意する必要があります。


⑶.YouTuber事務所や芸能事務所に所属している方
YouTuber事務所や芸能事務所に所属して活動する場合、その所属事務所等との契約関係により、事情が異なります。


ア.YouTubeをメインに活動し、事務所に所属する場合は、運営主体は個人事業主の方であることが多いと思います。YouTuberとしては、所属の際に締結するマネジメント契約等の契約内容に注意する必要があります。


イ.コロナ禍以降、芸能人の方のYouTube参入が話題にのぼりますが、芸能活動を主にされていた方が、新たにYouTube活動をされる場合は、アカウントをどちらが開設する/したのか自分と事務所のどちらが運営主体となるのかは事務所との契約によります。事務所とのマネジメント契約等によりSNSの利用に制限がある場合がありますので、あらかじめ確認・協議する必要があります。


⑷.グループYouTuberとして活動している方
グループYouTuberとして活動する場合、運営主体がグループとなる場合と、法人を設立して運営主体とする場合が考えられます。


ア.運営主体がグループとなる場合は、個人事業主であるメンバーが集まって、グループを結成することになると思います。この場合のグループは、法的にはメンバー間の組合契約によって成立した組織になると考えられます(民法667条以下)。
組合契約とは、各当事者が出資(労働も可)をして共同の事業を営むことを約することにより成立する契約をいいます(民法667条1項)。この場合、アカウント・チャンネル開設者・管理者、広告収益の分配割合や方法、組合の業務執行を誰が行うかなどをメンバー間で取り決めておくことになります(670条、670条の2、674条)。


イ.グループで活動するに当たり、法人を設立して、その法人がアカウント開設し、運営主体となる場合も考えらえます。この場合、所属メンバーは法人の経営者や従業員になります。グループ名(屋号)など、グループの財産については法人に帰属することになります。従業員・経営者との関係は、後述の⑵②③と同様になります。

2.企業が運営主体の場合


企業が運営主体となって、YouTubeアカウントを開設・管理している場合においては、そのチャンネルに出演しているYouTuber個人の起用方法の観点からさらに分類が可能です。

なお、出演者本人は「企業系YouTuber」と呼ばれることが多いと思います。(また、Vチューバ―が出演するYouTubeチャンネルの中にはこのケースもあるように思われます。)


⑴.業務委託をするケース
業務委託先としては、芸能事務所・声優事務所や映像製作会社などの企業のほか、個人事業主であるタレント・演者に直接依頼することもあると思われます。
チャンネル運営を委託元の企業が行うのか、委託先が行うのかなどの取決めは、業務委託契約によりさまざまです。



⑵.従業員を出演者として起用するケース
企業と従業員との関係は、雇用契約(労働契約)になりますので、企業の就業規則などに従って規律されます。


⑶.経営者本人が出演するケース
最後に、経営者本人が出演するケースも考えられます。この場合、経営者の活動は、運営主体である企業自身の活動とみるべきことになると思います。

第2.YouTuberにとって重要な法律関係

1.YouTube利用規約


YouTubeの広告収益プログラムによって収益を得る関係から、その活動における最も重要な契約は、YouTube利用規約になると思います。


YouTube利用規約はいくつもの規約が組み合わさって一つの内容を構成しています。そのため、YouTube利用規約の本体だけでなく、コミュニティガイドラインやポリシーなども遵守する必要があります。


特に、アップロードするコンテンツは、第三者の著作権について利用許諾を得ていることなど、「コミュニティガイドライン」を遵守する必要があります。規約違反がある場合、広告配信の停止やアカウント停止など重大なペナルティが課されることがありますので、注意が必要です。


「YouTube利用規約の重要ポイント」はこちら

2.素材利用における権利関係


動画制作にあたり、素材などを撮影・利用しようとする際は、次のような他人の権利を侵害しないように気を付ける必要があります。権利侵害は、YouTube利用規約違反につながりますし、権利者から差止請求や損害賠償請求を受ける可能性もあります。


 ○著作権・著作者人格権
    ○著作隣接権(レコード製作者の権利[原盤権]など)
 ○撮影対象者の肖像権・プライバシー


また、ゲーム実況動画の配信に関して、ガイドラインを公開しているゲーム会社もあり、同ガイドラインに従った動画制作をすることが望ましいです。

3.事務所所属の場合、事務所との契約(マネジメント契約など)


上記第1.1.⑶の方のように、事務所に所属する場合は、事務所との間で契約を締結することになります。


その契約形態は大きく分けて、雇用契約、請負契約、委任契約(エージェント契約)の3つのパターン(複数の性質を持つ契約の場合もある)がありますが、いずれの契約形態であっても、どのような義務を負うのか(案件の諾否を自由に決定できるか、動画制作業務)、どのようなマネジメント業務をしてもらうのか(プロモーション、案件紹介、契約締結の代理など)、利益分配はどうするのか等、YouTuber本人が希望する内容に適っているかをよく確認しておく必要があります。


事務所等の企業側から見た場合、YouTuber個人に対してどのようなサポートを行うのか(安全配慮義務や誹謗中傷・不祥事対応など)、SNSアカウントの管理をどのように行うのかなどを明確にしておくことが重要です。




以上、「YouTuber(ユーチューバー)」の分類と、重要な法律関係についてご紹介しましたが、ユーチューバーをめぐる法律については、まだまだ語るべきことがあります。 続きは、次回以降のコラムで紹介していきたいと思います。


・法律コラム「YouTuber(ユーチューバー)が有する権利~著作権・著作者人格権~」はこちら(2021年7月28日追記)


〈参考文献〉
エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク[編]「エンターテインメント法務Q&A第2版」(民事法研究会)
石井逸郎、藤田裕、高野倉勇樹、穐吉慶一、土肥勇、山口翔[著]「芸能人・芸能事務所の法務と税務-契約・労務からトラブル対応まで―」(ぎょうせい)


〈画像利用〉
いらすとや https://www.irasutoya.com/

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