令和5年フリーランス新法について②

query_builder 2023/12/01
法律コラム
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前回の記事に引き続き、2023年(令和5年)5月12日に公布された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律25号)、いわゆるフリーランス新法の内容をまとめていきます。
今回の記事は、フリーランス新法の各項目の詳細と今後の実務対応を内容としています。

定義や用語は、前回の記事でも説明しておりますので、そちらもご覧頂ければと思います。

第4.取引の適正化に関する項目

1.書面交付義務


業務委託事業者【※1】は、特定受託事業者(フリーランス)に対し業務委託をした場合、直ちに【※2】、給付の内容、報酬額、支払期日等【※3】を書面又は電磁的方法により【※4】明示する義務があります(法3条1項)。
さらに、フリーランスから求めがあれば書面を交付する義務があります(法3条2項)。

※1:従業員を使用する事業者だけでなく、従業員を使用しないフリーランスが委託側になる場合も本義務を遵守する必要があります。


※2:「直ちに」の例外として、内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その事項の内容が定められた後、直ちに明示することも可能です(法3条1項ただし書)。
「内容が定められないことにつき正当な理由がある」とは、取引の性質上、業務委託に係る契約を締結した時点ではその内容を決定することができないと客観的に認められる理由がある場合をいいます。
具体的には、放送番組の作成委託において、タイトル、放送時間、コンセプトについては決まっているが、委託した時点では、放送番組の具体的な内容については決定できず「報酬の額」が定まっていない場合などが挙げられています(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律Q&A(以下「Q&A」)問3)。


※3:詳しい明示事項は、今後制定される公正取引委員会規則により定められます。


※4:明示の方法は、書面交付だけでなく、電子メール・SNSなどの電磁的方法でも可能です。ただし、許容される具体的な電磁的方法の要件は公正取引委員会規則で定めることとされていますので、今後の動向に注目です(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料(以下「説明資料」) 7頁目)。

2.60日以内の支払義務


特定業務委託事業者は、給付を受領した日から起算して60日以内【※5】のできる限り短い期間内で、報酬支払期日を設定し(法4条1項)、支払う義務があります(法4条5項)。

支払期日を定めなかった場合は次のように支払期日が決まります(法4条2項)
①当事者間で支払期日を定めなかったとき ⇒ 物品等を実際に受領した日
②物品等を受領した日から起算して60日を超えて定めたとき ⇒ 受領日から起算して60日を経過した日の前日

※5:再委託をし、かつ、必要事項を明示した場合は、発注元から支払いを受ける期日から30日以内(法4条3項)。


3.禁止事項


特定業務委託事業者が、継続的に発注する場合【※6】、特定業務委託事業者は次の事項が禁止されます(法5条)。
①受領拒否
:特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付の受領を拒むこと。
②報酬減額
:特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬を減額すること。
③返品
:特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付を受領後、特定受託事業者にその給付に係る物を引き取らせること。
④買いたたき
:通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること。
⑤購入・利用強制
:正当な理由なく発注事業者の指定する物(製品、原材料等)の購⼊や役務(保険、リース等)の利⽤を強制すること。

⑥不当な経済上の利益の提供要請
:⾃⼰のために⾦銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
⑦不当な給付内容の変更・やり直し
:特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく、発注の取消しや内容を変更すること、⼜はやり直しや追加作業を行わせる場合にフリーランスが作業に当たって負担する費用を発注事業者が負担しないこと。

※6:更新により政令で定める期間以上行うものを含むとされており、その期間は今後制定されることになっています(Q&A_問5)。

第5.就労環境の整備に関する項目

1.募集情報の的確表示義務


特定業務委託事業者は、広告等により、募集情報を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならず(法12条1項)、正確かつ最新の内容に保たなければなりません(法12条2項)。

Q&A問6では、法違反とされる例として次のような例が挙げられています。
・報酬額の表示が、あくまで一例であるにもかかわらず、その旨を記載せず、当該報酬が確約されているかのように表示する(誤解を生じさせる表示)
・業務に用いるパソコンや専門の機材など、フリーランスが自ら用意する必要があるにもかかわらず、その旨を記載せず表示する(誤解を生じさせる表示)
他方で、法違反とならない例として次が挙げられています。
・当事者の合意に基づき、広告等に掲載した募集情報から実際に契約する際の取引条件を変更する。

2.妊娠、出産、育児、介護と業務の両立への配慮義務


特定業務委託事業者は、継続的な業務委託をしている場合【※7】、特定受託事業者が育児介護等と両⽴してその業務委託に係る業務を⾏えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければなりません(法13条)。

※7:この「継続的業務委託」は、政令で定める期間以上行うものをいうとされ、更新により政令で定める期間以上になる場合も含むとされています。「政令で定める期間」については、今後、関係者の意見をよく確認しながら、フリーランス取引の実態に即した期間の設定を検討するとされています(Q&A問7)。

Q&A問7では、必要な配慮の内容の例として次が挙げられています。
・フリーランスが妊婦検診を受診するための時間を確保できるようにしたり、就業時間を短縮したりする。
・育児や介護等と両立可能な就業日・時間としたり、オンラインで業務を行うことができるようにしたりする。

3.ハラスメント対策に係る体制整備義務


特定業務委託事業者は、フリーランスに対するハラスメント行為について、その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制整備その他の必要な措置を講じなければなりません(法14条1項)。
また、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったことを理由として不利益な取扱いをしてはなりません(法14条2項)。

具体的な措置の内容としては、Q&A問8では次が挙げられています。
①ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業員に対してその方針を周知・啓発すること(対応例:社内報の配布、従業員に対する研修の実施)
②ハラスメントを受けた者からの相談に適切に対応するために必要な体制の整備(対応例:相談担当者を定める、外部機関に相談対応を委託する)
③ハラスメントが発生した場合の事後の迅速かつ適切な対応(対応例:事案の事実関係の把握、被害者に対する配慮措置)

4.中途解除・契約不更新の30日前予告義務


特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の中途解除・不更新をしようとする場合には、特定受託事業者に対し、原則【※8】として、中途解除日等の30日前までに予告をしなければならない(法16条)。

※8:災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでないとされています(法16条1項ただし書)。30日前までの予告を不要とする例外的なケースは、今後、厚生労働省令で定める予定とされています(Q&A問9)。

第6.違反行為への対応等

以上の規制内容に違反する行為を受けた特定受託事業者は、フリーランス・トラブル110番を経由して、あるいは直接に、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省に今後設置される窓口に申告することができます。

また、公正取引委員会、中⼩企業庁⻑官⼜は厚⽣労働⼤⾂は、特定業務委託事業者等に対し、違反⾏為について助⾔、指導、報告徴収・⽴⼊検査、勧告、公表、命令をすることができます(法8条、9条、11条、18〜20条、22条)
命令違反及び検査拒否等に対しては、50万円以下の罰⾦に処せられることがあります(法24条、25条)。

第7.今後の実務対応

フリーランス新法を受けての実務対応について、発注側になる企業としては、個人事業者と取引をする場合は、フリーランス新法を遵守するようにしておいた方がよいと思われます。
理由としては、取引相手が「特定受託事業者」かどうか、すなわち、従業員を雇用しているかは外形上把握することが難しく、逐一確認することも現実的ではないためです。
フリーランス新法は、取引適正化のために規制されているものであるため、きちんと遵守するようにすれば、相手方がどのような規模の事業者であれ、取引トラブルが減るという効果は見込めると思いますので、フリーランス新法をベースに対応を検討されるとよいと考えます。

また、特定受託事業者であるフリーランスへ業務委託する場合は、発注側に従業員がいるどうかを問わず、書面交付義務を遵守する必要がある点にも注意が必要です。

すなわち、自身が従業員のいないフリーランスであっても、別のフリーランスに業務を発注する場合は、取引条件を直ちに明示する必要があります。

以上、ご参考にしていただければ幸いです。


(2023年12月1日公開)


PexelsによるPixabayからの画像を使用しています。


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