令和5年フリーランス新法について②

query_builder 2023/12/01
法律コラム
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前回の記事に引き続き、2023年(令和5年)5月12日に公布された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律25号)、いわゆるフリーランス新法の内容をまとめていきます。
今回の記事は、フリーランス新法の各項目の詳細と今後の実務対応を内容としています。

定義や用語は、前回の記事でも説明しておりますので、そちらもご覧頂ければと思います。


2024年5月24日追記:令和6年4月12日にパブリックコメントによる意見募集が公示され(意見募集は同年5月11日に終了)、そのなかで、政令等により定めるとされていた事項の案が公表されましたので本文中に追記しています。
パブリックコメント
「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(案)」等に関する意見募集について

第4.取引の適正化に関する項目

1.書面交付義務


業務委託事業者【※1】は、特定受託事業者(フリーランス)に対し業務委託をした場合、直ちに【※2】、給付の内容、報酬額、支払期日等【※3】を書面又は電磁的方法により【※4】明示する義務があります(法3条1項)。
さらに、フリーランスから求めがあれば書面を交付する義務があります(法3条2項)。

※1:従業員を使用する事業者だけでなく、従業員を使用しないフリーランスが委託側になる場合も本義務を遵守する必要があります。


※2:「直ちに」の例外として、内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その事項の内容が定められた後、直ちに明示することも可能です(法3条1項ただし書)。
「内容が定められないことにつき正当な理由がある」とは、取引の性質上、業務委託に係る契約を締結した時点ではその内容を決定することができないと客観的に認められる理由がある場合をいいます。
具体的には、放送番組の作成委託において、タイトル、放送時間、コンセプトについては決まっているが、委託した時点では、放送番組の具体的な内容については決定できず「報酬の額」が定まっていない場合などが挙げられています(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律Q&A(以下「Q&A」)問3)。


※3:詳しい明示事項は、今後制定される公正取引委員会規則により定められます。

2024年5月24日追記:令和6年4月12日公示パブリックコメント別紙2の公正取引委員会規則(案)(以下「公取委規則」)によると、明示事項は以下とされています。
①業務事業者の商号、名称など業務委託事業者及びフリーランスを識別できる情報
②業務委託をした日
③フリーランスの給付(提供役務)の内容
④給付受領日・役務提供日
⑤給付・役務提供の場所
⑥給付・役務について検査をする場合、その完了期日
⑦報酬額及び報酬支払期日
⑧手形交付、一括決済方式、電子記録債権、デジタル払で報酬を支払う場合に必要な事項
(①~⑧につき、公取委規則1条1項1号~11号)
⑨再委託の場合(後述2※5)、再委託である旨、元委託者の商号・名称など元委託者を識別できる情報、元委託業務の対価の支払期日(公取委規則1条2項)
⑩報酬の具体額の明示が困難なやむを得ない事情がある場合、報酬の算定方法(公取委規則1条3項)
⑪未定事項がある場合、内容を定められない理由及び内容を定める予定期日(公取委規則1条4項)
⑫共通事項(基本契約など)がある場合、個別契約との関連性の明示(公取委規則3条)
⑬未定事項がある場合、当初明示事項との関連性を確認できる記載事項(公取委規則4条)


※4:明示の方法は、書面交付だけでなく、電子メール・SNSなどの電磁的方法でも可能です。ただし、許容される具体的な電磁的方法の要件は公正取引委員会規則で定めることとされていますので、今後の動向に注目です(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料(以下「説明資料」) 7頁目)。

2024年5月24日追記:令和6年4月12日公示パブリックコメント別紙5の「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方(案)について(概要)」15頁によると、明示の方法として許容される電磁的方法は、電子メールのほか、SMSやSNSのメッセージ機能等のうち、送信者が受信者を特定して送信することのできるものをいうとされています(公取委規則2条)。
他方で、ブログやウェブページ等への書き込みのような誰でも閲覧可能な媒体に付随して、特定の個人に情報を伝達できる機能を用いることは認められないとされています。

2.60日以内の支払義務


特定業務委託事業者は、給付を受領した日から起算して60日以内【※5】のできる限り短い期間内で、報酬支払期日を設定し(法4条1項)、支払う義務があります(法4条5項)。

支払期日を定めなかった場合や60日以内のルールに違反した場合は次のように支払期日が決まります(法4条2項)
①当事者間で支払期日を定めなかったとき ⇒ 物品等を実際に受領した日
②物品等を受領した日から起算して60日を超えて定めたとき ⇒ 受領日から起算して60日を経過した日

※5:(2024年5月24日修正・追記)

以下の図のように再委託(元委託者→特定業務委託事業者→フリーランス)をし、かつ、元委託支払期日等の必要事項を明示した場合は、次のとおりに支払期日を設定し、支払う義務があります。
①元委託者から特定業務委託事業者への対価の支払期日(元委託支払期日)から起算して30日以内、かつできる限り短い期間内(法4条3項)。

②フリーランスへの支払期日を定めなかった場合は、元委託支払期日が支払期日とみなされる(法4条4項)。
③30日以内のルール(①)に違反してフリーランスへの支払期日を定めた場合は、元委託支払期日から起算して30日経過日が支払期日とみなされる。(法4条4項)。

令和6年4月12日公示パブリックコメント別紙2の公正取引委員会規則(案)第6条によると、明示すべき必要事項は以下とされています。
①再委託である旨
②元委託者の商号・名称など元委託者を識別できる情報
③元委託業務の対価の支払期日


240524フリーランス新法_HP2

3.禁止事項


特定業務委託事業者が、継続的に発注する場合【※6】、特定業務委託事業者は次の事項が禁止されます(法5条)。
①受領拒否
:特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付の受領を拒むこと。
②報酬減額
:特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬を減額すること。
③返品
:特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付を受領後、特定受託事業者にその給付に係る物を引き取らせること。
④買いたたき
:通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること。
⑤購入・利用強制
:正当な理由なく発注事業者の指定する物(製品、原材料等)の購⼊や役務(保険、リース等)の利⽤を強制すること。

⑥不当な経済上の利益の提供要請
:⾃⼰のために⾦銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
⑦不当な給付内容の変更・やり直し
:特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく、発注の取消しや内容を変更すること、⼜はやり直しや追加作業を行わせる場合にフリーランスが作業に当たって負担する費用を発注事業者が負担しないこと。

※6:更新により政令で定める期間以上行うものを含むとされており、その期間は今後制定されることになっています(Q&A_問5)。


2024年5月24日追記:令和6年4月12日公示パブリックコメントの別紙1によると、政令で定める期間は、「一月」(1か月)とするとされています(フリーランス新法施行令第1条)。


第5.就労環境の整備に関する項目

1.募集情報の的確表示義務


特定業務委託事業者は、広告等により、募集情報を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならず(法12条1項)、正確かつ最新の内容に保たなければなりません(法12条2項)。

Q&A問6では、法違反とされる例として次のような例が挙げられています。
・報酬額の表示が、あくまで一例であるにもかかわらず、その旨を記載せず、当該報酬が確約されているかのように表示する(誤解を生じさせる表示)
・業務に用いるパソコンや専門の機材など、フリーランスが自ら用意する必要があるにもかかわらず、その旨を記載せず表示する(誤解を生じさせる表示)
他方で、法違反とならない例として次が挙げられています。
・当事者の合意に基づき、広告等に掲載した募集情報から実際に契約する際の取引条件を変更する。


2024年5月24日追記:令和6年4月12日公示パブリックコメントの別紙1によると、政令で定める的確表示の対象となる募集情報は次のとおりとされています(フリーランス新法施行令第2条)。
・業務の内容
・業務に従事する場所、期間又は時間に関する事項
・報酬に関する事項
・契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。)に関する事項
・特定受託事業者の募集を行う者に関する事項

2.妊娠、出産、育児、介護と業務の両立への配慮義務


特定業務委託事業者は、継続的な業務委託をしている場合【※7】、特定受託事業者が育児介護等と両⽴してその業務委託に係る業務を⾏えるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければなりません(法13条)。

※7:この「継続的業務委託」は、政令で定める期間以上行うものをいうとされ、更新により政令で定める期間以上になる場合も含むとされています。「政令で定める期間」については、今後、関係者の意見をよく確認しながら、フリーランス取引の実態に即した期間の設定を検討するとされています(Q&A問7)。

2024年5月24日追記:令和6年4月12日公示パブリックコメントの別紙1によると、政令で定める期間は、「六月」(6か月)とするとされています(フリーランス新法施行令第3条)。

Q&A問7では、必要な配慮の内容の例として次が挙げられています。
・フリーランスが妊婦検診を受診するための時間を確保できるようにしたり、就業時間を短縮したりする。
・育児や介護等と両立可能な就業日・時間としたり、オンラインで業務を行うことができるようにしたりする。

3.ハラスメント対策に係る体制整備義務


特定業務委託事業者は、フリーランスに対するハラスメント行為について、その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制整備その他の必要な措置を講じなければなりません(法14条1項)。
また、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったことを理由として不利益な取扱いをしてはなりません(法14条2項)。

具体的な措置の内容としては、Q&A問8では次が挙げられています。
①ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業員に対してその方針を周知・啓発すること(対応例:社内報の配布、従業員に対する研修の実施)
②ハラスメントを受けた者からの相談に適切に対応するために必要な体制の整備(対応例:相談担当者を定める、外部機関に相談対応を委託する)
③ハラスメントが発生した場合の事後の迅速かつ適切な対応(対応例:事案の事実関係の把握、被害者に対する配慮措置)

4.中途解除・契約不更新の30日前予告義務


特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の中途解除・不更新をしようとする場合には、特定受託事業者に対し、原則【※8】として、中途解除日等の30日前までに予告をしなければならない(法16条)。

2024年5月24日追記:本条の「継続的業務委託」は、法13条の継続的業務委託と同様であり、令和6年4月12日公示パブリックコメントの別紙1によると、政令で定める期間は、「六月」(6か月)とするとされています(フリーランス新法施行令第3条)。


※8:災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでないとされています(法16条1項ただし書)。30日前までの予告を不要とする例外的なケースは、今後、厚生労働省令で定める予定とされています(Q&A問9)。

2024年5月24日追記:令和6年4月12日公示パブリックコメントの別紙3によると、次の事由が30日前までの予告を不要(即時解除が可能)とする例外的な場合とされています(厚生労働省令4条、別紙5「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方(案)について(概要)」44頁以下も参照)。

①災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合
②再委託の場合に、元委託者からの契約の全部又は一部の解除等により、当該フリーランスへ再委託した業務の大部分が不要となってしまう等、直ちに契約を解除せざるを得ない場合
③基本契約に基づいて業務委託を行う場合または契約の更新により継続して業務委託を行う場合であって、契約期間が30日以下である一の業務委託に係る契約(個別契約)を解除しようとする場合
④特定受託事業者(フリーランス)の責めに帰すべき事由に基づいて直ちに契約を解除することが必要であると認められる場合
⑤基本契約を締結している場合であって、特定受託事業者(フリーランス)の事情により相当な期間(概ね6か月以上)、当該基本契約に基づく業務委託(個別契約)をしていない場合


第6.違反行為への対応等

以上の規制内容に違反する行為を受けた特定受託事業者は、フリーランス・トラブル110番を経由して、あるいは直接に、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省に今後設置される窓口に申告することができます。

また、公正取引委員会、中⼩企業庁⻑官⼜は厚⽣労働⼤⾂は、特定業務委託事業者等に対し、違反⾏為について助⾔、指導、報告徴収・⽴⼊検査、勧告、公表、命令をすることができます(法8条、9条、11条、18〜20条、22条)
命令違反及び検査拒否等に対しては、50万円以下の罰⾦に処せられることがあります(法24条、25条)。

第7.今後の実務対応

フリーランス新法を受けての実務対応について、発注側になる企業としては、個人事業者と取引をする場合は、フリーランス新法を遵守するようにしておいた方がよいと思われます。
理由としては、取引相手が「特定受託事業者」かどうか、すなわち、従業員を雇用しているかは外形上把握することが難しく、逐一確認することも現実的ではないためです。
フリーランス新法は、取引適正化のために規制されているものであるため、きちんと遵守するようにすれば、相手方がどのような規模の事業者であれ、取引トラブルが減るという効果は見込めると思いますので、フリーランス新法をベースに対応を検討されるとよいと考えます。

また、特定受託事業者であるフリーランスへ業務委託する場合は、発注側に従業員がいるどうかを問わず、書面交付義務を遵守する必要がある点にも注意が必要です。

すなわち、自身が従業員のいないフリーランスであっても、別のフリーランスに業務を発注する場合は、取引条件を直ちに明示する必要があります。

以上、ご参考にしていただければ幸いです。


(2023年12月1日公開)

(2024年5月24日更新)


PexelsによるPixabayからの画像を使用しています。


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