【フリーランス】業務委託契約における著作権条項の基礎知識|中央区・壷屋法律事務所

query_builder 2021/10/15
法律コラム
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「業務委託契約書」の中には、著作権に関する条項が含まれています。
それがどのような内容なのかというお問い合わせも多いことから、内容を説明したいと思います。
なお、本文における条項の番号は、特に記載のない限り著作権法のものを意味します。

第1.著作権と著作者人格権とは

以前のコラムでもご紹介しましたが、著作権法に定める権利は、著作権著作者人格権(17条1項)に分かれます。


著作権は、自分の創作物(著作物)について、複製やネット上にアップロードすること(公衆送信)など著作権法で定められた利用行為(21条~28条)を、独占的に行うことができる権利です。

「独占的に利用できる」とは、第三者は、著作者の許諾がなければ、著作物の利用(著作権法で定められた利用行為)ができないということを意味します(63条)。【※1】

著作権は、著作者が第三者に対して利用許諾をすることによって対価を得られるという意味で、財産的な権利であるといえます。


著作者人格権は、著作者の精神的価値を保護する権利です。公表権(18条)、氏名表示権(19条)、同一性保持権(20条)、名誉または声望の保持に関する権利(113条11項)を内容としています。
特に、著作権の譲渡に関する場面では、作品とタイトルを勝手に改変されない権利である同一性保持権の扱いが問題となります。
これらの権利は、著作物を創作した者(著作者)が有します(2条1項1号)。


第2.契約上の著作権条項の意義・必要性

業務委託契約に基づき、受注者がイラストや動画などの成果物を制作し、納品する場合、「著作権」を発注者と受注者のどちらが保有するかを決める必要があります


なぜなら、著作者は、創作時(初めから)から著作権を保有するため(17条)、契約において取り決めない限りは、著作権は著作者である受注者(クリエイターなど)に残ることになり、発注者は代金を支払ったにもかかわらず、その後の自由な利用ができないという自体になるからです。


他方、受注者(クリエイターなど)からすると、自己に著作権を残しておきたいと考える場合には、その旨を明記し、発注者に利用を許可する範囲を明確にしておく必要があります。そのような取り決めをしていない場合、許可したつもりのない使い方をされて、嫌な思いをしたり、トラブルになることがあるからです。


それでは、契約書において、著作権や著作者人格権に関する規定を定める場合、どのような点に注意する必要があるのかを以下で解説します。

第3.著作権に関する規定

1.著作権の譲渡


前述のように、著作権は受注者(著作者)に初めから帰属しますから、成果物の著作権の譲渡を受けたいと考える発注者は、著作権の譲渡を受ける旨を契約書に記載しておく必要があります。


しかし、その際に注意しておくべきことがあります。
著作権の譲渡について取り決める場合、翻案権(27条)二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(28条)が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定されます(同法61条2項)。
そのため、これらの権利も含めて譲渡を受けたいと考える発注者は、必ず譲渡対象に含まれる旨を記載しておく必要があります。


例えば、将来の活動拡大も見越して、バーチャルユーチューバーとして使用する(イラストをLive2Dで動かして配信する)ためにキャラクターデザインの制作を委託し、著作権の譲渡を受けた場合であっても、翻案権が含まれる旨を記載しておかなければ、自由に(著作者の許可なく)3Dモデルを作ることやグッズを制作することはできなくなるおそれがあります(もっとも、実際にトラブルになることは少ないと思います)。


以上を実際の条項例でも確認してみます。
例1のような規定では、翻案権や二次的著作物に関する原著作者の権利は、譲渡の対象になりません。


(例1)
「受注者は、本件成果物に係る著作権を、納品時に(代金支払時に)発注者に譲渡する。


そこで、例2のように記載する必要があります。


(例2)
受注者は、本件成果物に係る著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む)を、納品時に(代金支払時に)甲に譲渡する。


このように記載して初めて、譲渡対象に含まれることになりますので、契約書作成の際はご注意ください。【※2】



2.利用許諾


成果物の著作権を譲渡せず、自らに残したいと考えるクリエイターの方は多いです。
その場合、発注者に許可する著作物の利用範囲を契約書に明記しておく必要があります。この部分を曖昧にしておくと、思わぬトラブルに発展することがあるためです。


そこで、利用許諾の条項を設ける場合は、次の事項を明記するようにしてください。


 ①利用目的(何に利用する目的か)
 ②利用媒体(利用する媒体は何か)
 ③利用方法(どのように利用するか)
 ④利用期間(期限を定めるのか、無期限とするのか)


なお、以上のような「利用許諾の範囲」に関する記載は、著作権に関する知識も必要です。複雑な内容の取決めが必要な場合がありますので、このような著作権規定に関してご不安がある方は専門家にご相談されることをお勧めいたします。【※3】


第4.著作者人格権に関する規定

著作権と異なり、著作者人格権は譲渡不可とされています(59条)。
そのため、何ら取決めをしていない場合、成果物を改変したいと考える発注者は、著作権の譲渡を受けていたとしても、同一性保持権を有している著作者の許諾を得る必要があります。
これでは、せっかく著作権の譲渡を受けたにもかかわらず、自由に業務に活用できないことになってしまいます。


そこで、実務上は、著作権の譲渡に関する規定と一緒に、著作者に対して、著作者人格権を行使しないことを約束させる旨の規定を置くことが通例となっています。


(例)
受注者は、本件成果物に係る著作者人格権を行使しないものとする。


なお、著作者人格権には、氏名表示権もあります。【※4】
発注者が成果物を公開するにあたって、著作者名などを表示することを希望する場合には、その旨を取り決めておくことが望ましいです。

第5.まとめ

以上、「著作権」「著作者人格権」に関する条項について解説いたしました。
著作権条項について、その意味や注意点など、少しでもご参考にして頂ければ幸いです。
著作権に関する規定は、法律の知識が必要でもありますので、どのような記載にすればいいのかわからないといった場合は、専門家に相談されることをお勧めいたします。


(公開日)
2021年10月15日


――――――――――――――――――――――――――――――


※1:著作権法で定められている利用行為の内容については、法律コラム「YouTuberが有する権利~著作権・著作者人格権~」もご参考ください。


※2:その他、受注者が、自己の保有する著作物を使用して成果物を制作するといった場合、従前から保有している権利との関係で、どのように規定するのかという問題もあります。


※3:例えば、キャラクターイラストを将来グッズ化する際に、そのキャラクター価値が損なわれないように事前に受注者(著作者)に内容を確認し、その許諾を得るといった内容を定めることがあります。


※4:氏名表示権とは、著作者名の表示・内容を決めることができる権利です(19条)。

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