「切り抜き動画」と著作権➁
前回の法律コラムでは、近時YouTubeを中心に人気を博している「切り抜き動画」について、著作権法の観点からの整理をしました。
本記事では、「切り抜き動画」を含む二次創作についてのガイドラインやライセンスについて、UUUM社のリリースを中心にその内容を確認するとともに、業界の動きも確認してみたいと思います。
【目次】
第2.二次創作に関するガイドラインの役割
1.UUUM社のリリースについて
2.ライセンスやガイドラインの意義
3.その他のYouTubeチャンネルにおける動き
※前回記事の続きのため、目次番号を「第2」としています。
第2.二次創作に関するガイドラインの役割
1.UUUM社のリリースについて
「切り抜き動画」が拡大する状況のなか、先日ユーチューバー事務所大手のUUUM株式会社は、「YouTubeコンテンツに関する『二次創作ライセンス許諾プログラム』の取り組みに関するお知らせ」をリリースしました。 https://www.uuum.co.jp/2021/07/29/65069
なお、本コラムは同リリースから理解された内容に基づいていますが、詳細はUUUM社へお問合せください。
この「二次創作ライセンス許諾プログラム」は、UUUM専属クリエイター(対象クリエイターに限られるそうです。)のYouTube動画について、二次創作の希望者が一定の条件を満たし、かつ、「二次創作ライセンス契約」を締結した場合に、二次創作と配信を行うことを許諾し、アドセンス収益を得ることを承認するという内容です。
二次創作制作者は、このライセンスに基づくことで、著作権法上問題なく、「切り抜き動画」などの二次創作コンテンツを制作・投稿し、アドセンス収益を得ること(収益は分配とし、分配比率は個別の契約書で定めるとのこと)ができます。【※3】
2.ライセンスやガイドラインの意義
このようなライセンスやガイドラインを提示する意義について整理してみます。
クリエイター側としては、次の点が挙げられます。
①一定の条件を示すことで違法動画を減らすことができること
➁収益を分配できること
③ファン活動による元動画の視聴回数増などの相乗効果が期待できること
他方、ファン(二次創作制作者)側としては、次の点が挙げられます。
①著作権侵害というリスクがなくなること
➁公認のファン活動として動画投稿ができること
③収益が得られること
著作権法による保護は著作権者の保護に手厚いものの、第三者による二次創作・利用という点からは権利侵害、刑事罰という極めて高いハードルが設けられることになります。我が国では、権利者側が黙認することで二次創作文化が発展してきましたが、権利行使のリスクを負いながら行うことになります。
こうしたガイドラインやライセンスが公表されることは、曖昧な状況を整理することで、更なる創作、ファン活動を広げていくものとしてとても有益なものであると考えます。
3.その他のYouTubeチャンネルにおける動き
また、YouTubeにおいてMCN(マルチチャンネル ネットワーク)として活動している企業を通じて、動画クリエイターが「切り抜き動画」の投稿・収益化を認めている場合もあります。【※4】
例えば、MCN活動を行っている「ガジェット通信クリエイターネットワーク」では、切り抜き動画を投稿できるクリエイターとして、ひろゆき氏などが掲載されています。
https://getnews.jp/mcn/kirinuki
MCNを通じて投稿を行う場合、切り抜き動画のYouTubeチャンネルはMCNに紐づけられ、MCNより収益が分配されることになります。
今後、他のユーチューバー事務所などが「切り抜き動画」を含む二次創作についてのガイドラインを公表する可能性もあり、今後の動向が注目されます。【※5】
無所属で活動されているクリエイターの方も、業界の動きを見つつ、メリットがある場合には「切り抜き動画」を承認することも一案であるように思います。
その場合、MCN活動を行う企業を利用することが考えられますが、企業毎に条件は様々と思いますので、契約の際には提示された内容をよく検討することをお勧めいたします。
以上、2回にわたり「切り抜き動画」に関する内容をお送りいたした。
ご参考にしていただければ幸いです。
(参考文献)
エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク[編]「エンターテインメント法務Q&A[第2版]」(民事法研究会)
(公開日)
2021年8月16日
※3:UUUM社は、「見どころやおすすめのワンシーンをピックアップし投稿すること(切り抜き)」としており、切り抜きを含む二次創作を承認する内容と解されます。
※4:MCNとは、複数のYouTubeチャンネルと提携し、視聴者の開拓や著作権管理、収益化、営業などクリエイターのサポートを行うサービス提供者を言います。
参照:https://support.google.com/youtube/answer/2737059?hl=ja#zippy=%2Cmcn-%E3%81%A8%E3%81%AE%E5%A5%91%E7%B4%84
※5:ほかにも、YouTubeチャンネル「ウェザーニュース」は、天気予報のライブ配信をしていますが、「ウェザーニュースLiVE
ネットワークサービスにおける番組映像等の利用に関するガイドライン」(最新版・2021年8月10日)(URL:https://weathernews.jp/wnl/guideline/)を公表し、一定の条件のもとで、広告収益化を含む「切り抜き動画」の投稿を認めています。その背景には、視聴者による番組のシェアが減災・防災に繋がるという考えがあるようです。
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